秋と言えばひやおろし。ひやおろしって何だかちゃんと説明できますか?

秋と言えばひやおろし。ひやおろしって何だかちゃんと説明できますか?


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日本酒は何かと言って専門用語が出てくるので、なかなか理解するのが難しいですね。私もまだまだ知ったかぶりをして、知ったつもりになって飲んでいたり、うんちくを垂れたりしてしまいます。 「ひやおろし」についてもそう。 語感や意味からなんとなーくこういう酒なのかなぁーって思って飲んでいたんですが、調べてみたところ、そのイメージと定義がまったくかけ離れていたものだったので、驚きと同時に恥ずかしさがこみ上げてきたという経験があります。

みなさんは「ひやおろし」をしっかりと理解していますか?日本酒は言葉の意味や用語を理解することによって、さらに美味しく味わうことができる飲み物なので、この機会にぜひ「ひやおろし」について勉強してみましょう!

「ひやおろし」って、普通の日本酒と何が違う?

ひやおろしと書かれた日本酒とそうでない日本酒。この違いは一体どこにあるのでしょうか。この違いを理解するには、まず日本酒がどのようにして造られているかについてざっと理解することが必要です。

まずは、日本酒造りの簡単な作業工程について。かなり大雑把に説明しますが、初めに原料である米に処理をかけていきます。精米→洗米→浸漬→蒸米。 その後、酒母(蒸米+酵母+麹+水)と麹(蒸米+麹菌)を混ぜて、醪を仕込んでいきます。醪とはそれらがすべて混ざり、かつ発酵によってアルコールなどが発生したどろどろの液体のことであり、これを目の粗い布に入れて搾ることによって、布の中には固体が残り、濾過された液体=日本酒だけが取り出せるのです。

このあと、出荷の作業のために貯蔵、瓶詰めという作業を行っていくのですが、一般的な日本酒は秋口から冬にかけてこの工程を行い、翌年の3月頃までに全工程を終えて出荷を行います。それに対して、ひやおろしは、搾り終えた日本酒をそのまま夏まで貯蔵し、夏の終わりから秋にかけて瓶詰めを行い出荷されるのです。

日本酒の1年は7月1日に始まり6月30日という期間で年度が設定されているので、例えば、2016年の3月に出来上がったお酒は6月30日までに売らなければ新酒とは言えません。7月1日を超えてしまうと、同じ2016年に製造していても新酒と呼ぶことはできなくなるので、ひやおろしは一般的な日本酒が新酒であるのに対して、古酒という部類になります。

また、一般的な日本酒は、搾り→貯蔵→瓶詰めの間に火入れという作業を行います。火入れとは日本酒の中に生息している菌を殺菌することによって味を整えることを言いますが、ひやおろしは、火入れの回数が一般的な日本酒とは異なります。詳しくは「生酒って…何!?今さら聞けない日本酒の基本!生酒、生貯蔵、生詰めの違い」を参照していただきたいのですが、おさらいの意味も込めてこちらでも軽く触れたいと思います。

  • 搾り→火入れ→貯蔵→火入れ→瓶詰め=普通酒
  • 搾り→火入れ→貯蔵→×××→瓶詰め=生詰め
  • 搾り→×××→貯蔵→火入れ→瓶詰め=生貯蔵
  • 搾り→×××→貯蔵→×××→瓶詰め=生酒

ひやおろしは春に火入れをして夏まで貯蔵、その間にじっくりで熟成させて夏の終わりから秋口にかけて火入れを行わずそのまま瓶詰めをしますので、生詰めに当たります。火入れを行うと風味や香りが安定したり、腐敗が進んで飲めなくなるのを防いだりできますが、その分、日本酒らしい深み、米の旨みなどが消えてしまうことがあります。 冬に仕込んだ日本酒が傷まないように火入れを行い、春から夏にかけてじっくりと熟成させた旨みを殺さないために瓶詰め前の火入れをしないことによって、日本酒の旨みをダイレクトに味わえるのがひやおろしのいいところなんですね!

特に夏の暑さを超えると日本酒には劇的な旨み、深み、そしてバランスが生まれますので、ひやおろしのできる9月、10月、11月頃はぜひひやおろしを楽しみたいところですね。

ひやおろしにも種類があるって知ってた?

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ひやおろしは普通ラベルに「ひやおろし」の文字が入っていますが、実はラベルに記載こそありませんがひやおろしには3つの種類に分類されます。

  • 夏越し酒
    ひやおろしは9月、10月、11月に販売されると言いましたが、9月頃に販売されるひやおろしを「夏越し酒(なごしざけ)」と言います。すっきりと整った軽快さが特徴、渋みや雑味などの荒々しさが薄れ、まだまだ残暑が続く9月の夏空の元、みぞれ酒冷酒にしても美味しくいただけるひやおろしとなっています。
  • 秋出し一番酒
    ひやおろしの中でも10月あたり、暑さも和らぎ心地よい風が吹いてくる秋口に販売される日本酒を秋出し一番酒といいます。夏越し酒よりも熟成が進んでいますが特別濃いというわけではなく、風味、香り、のどごし、どれをとってもバランスのいいお酒に育っているものが多いという特徴があります。バランスが秀逸なため、ちょっと暑いなーという日には冷やで、逆に寒くなってきたなーと感じる日は熱燗にしても美味しく飲むことができます。
  • 晩秋旨酒
    暑さよりも寒さの方が目立ってくる11月、紅葉も真っ盛りなこの時期に販売されるひやおろしを晩秋旨酒といいます。さらに熟成が進んで、深みや旨みがこれでもかと言わんばかりに色濃く反映されたひやおろしが晩秋旨酒の特徴です。秋の食材、冬の食材を生かした日本料理、秋刀魚や松茸、醤油や味噌をベースにした鍋などにあうひやおろしとなっています。

おすすめのひやおろし

現在、日本には全国1,500を超える酒蔵があり、ほとんどの蔵でひやおろしを造っています。好きな銘柄がある方は、その蔵のひやおろしを飲んでみることをおすすめしますが、とりあえずひやおろしが飲んでみたいという方は次のひやおろしをおすすめします。

浦霞 ひやおろし 特別純米酒

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米どころである宮城県に蔵を構え、宮城県産の美味しいお米ササニシキやひとめぼれなどを使った日本酒を造る株式会社佐浦。代表銘柄の浦霞でもひやおろしを製造しており、『浦霞 ひやおろし特別純米酒』は、9月販売の夏越し酒となっています。程よく熟した特別純米酒ならではの広がりのある米の味わいは、食用米であるササニシキならではの特徴です。浦霞では、特別純米酒だけでなく、『ひやおろし 純米酒』もあります。

浦霞については『歴史や文化に根ざした酒造り。浦霞が魅せる吟醸の素晴らしさと生活に寄り添う日本酒造り!』も参照してみてください。

画像参照元:うらかすみ便り | 浦霞醸造元 株式会社 佐浦

雪の茅舎 ひやおろし 純米吟醸

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純米吟醸という日本酒の旨みを感じるには持って来いの品質でひやおろしを造っている齋彌酒造店。代表銘柄はもちろん雪の茅舎であり、こちらの『雪の茅舎 純米吟醸 ひやおろし』も格別な味わいを醸し出す一本です。 雪の茅舎はいろんなものをプラスするのではなく、無駄なものを徹底的に排除し、差し引いていくことで日本酒本来の旨みを表現することに長けた日本酒で、吟醸酒ならではの口当たり、そして香りを楽しめるひやおろしがおすすめです。こだわりの山廃製法で造られた『ひやおろし 山廃純米酒』や純米吟醸であり山廃であるという上記の二つのいいとこどりをした『ひやおろし 秘伝山廃 純米吟醸』もおすすめです。

雪の茅舎については『日本酒造りには「ない」ほうがいいものがある!雪の茅舎の酒造りの引き算とは!?』もご参照いただけます。

画像参照元:アキモト酒店

〆張鶴 純米吟醸 越淡麗

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淡麗旨口と言えば〆張鶴というくらいこだわりの日本酒を造っている宮尾酒造株式会社。こちら自慢のひやおろし『〆張鶴 純米吟醸 越淡麗』はひやおろしという名前はついていないものの、10月発売の限定商品となっているため、ひやおろしならではの美味しさを楽しむことができます。越淡麗とは使用している酒米の名前なんですが、その名のとおり、キレのある淡麗を味わうことができます。10月販売ですがこのキレをより味わうために冷やロックがおすすめ。

〆張鶴については『これぞまさしく淡麗旨口!日本酒「〆張鶴」が生まれた村上市はサケの町?』もご参照ください。

画像参照元:益田甚兵衛酒店

以上、ひやおろしについてのまとめでした。スポーツの秋、読書の秋、そして食欲の秋。美味しい日本酒は美味しい料理と引き立てあう存在ですので、ぜひそこにひやおろしの秋も加えて、楽しく、美味しく日本酒を味わいましょう。


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